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インプラント治療ができない人とは?全身疾患との関係
インプラント治療を検討されている方の中には、「自分の健康状態でインプラント治療は受けられるのだろうか」と不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。インプラント治療は優れた治療法ですが、すべての方に適しているわけではありません。
本記事では、インプラント治療が難しい場合やリスクが高い場合、全身疾患とインプラント治療の関係、そして治療を受けるための条件などを詳しく解説いたします。ご自身の状態を理解し、適切な治療選択をするための参考にしていただければ幸いです。
目次
- インプラント治療の基本条件
- インプラント治療が難しい全身疾患
- 相対的禁忌症と治療の可能性
- 局所的な問題とインプラント治療
- 治療を受けるための準備と対策
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
1. インプラント治療の基本条件

インプラント治療を安全に受けるためには、いくつかの基本的な条件があります。
インプラント治療に必要な条件
十分な顎の骨がある インプラント体を埋め込むためには、十分な量と質の顎の骨が必要です。骨が不足している場合でも、骨造成術などで対応できることがありますが、極端に骨が少ない場合は治療が難しくなります。
良好な全身状態 手術に耐えられる健康状態であることが重要です。手術は局所麻酔で行われることが一般的ですが、それでも体への負担はあります。
口腔内が健康である 虫歯や歯周病がある場合は、まずそれらを治療してから、インプラント治療に進むことが推奨されます。
適切なケアができる インプラント治療後は、定期的なメンテナンスと毎日の口腔ケアが不可欠です。これらを継続できることが、長期的な成功につながります。
絶対的禁忌症と相対的禁忌症
医学的には、「絶対的禁忌症」と「相対的禁忌症」という考え方があります。
絶対的禁忌症 どのような条件下でも治療を行うべきでない状態です。インプラント治療における絶対的禁忌症は、実は非常に限られています。
相対的禁忌症 条件を整えたり、リスクを管理したりすることで、治療が可能になる場合がある状態です。多くの全身疾患は、この相対的禁忌症に該当します。
つまり、多くのケースでは、「絶対に治療ができない」というよりも、「慎重な管理が必要」「治療前に準備が必要」という状況なのです。
2. インプラント治療が難しい全身疾患

全身疾患の中には、インプラント治療のリスクを高めるものがあります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
骨に影響を与える疾患
骨粗鬆症 骨粗鬆症は、骨の密度が低下し、骨が脆くなる病気です。特に、骨粗鬆症の治療薬である「ビスホスホネート製剤」を服用している場合、注意が必要です。
この薬剤は骨を強くする効果がありますが、一方で顎の骨の壊死を引き起こすリスクがあります。特に注射タイプのビスホスホネート製剤を使用している場合、リスクが高まるとされています。
ただし、これは「治療ができない」という意味ではありません。主治医と歯科医師が連携し、薬の休薬期間を設けるなどの対策をとることで、治療が可能になる場合があります。
その他の骨代謝疾患 副甲状腺機能亢進症など、骨の代謝に影響を与える疾患がある場合も、慎重な判断が必要です。
糖尿病
糖尿病は、インプラント治療において特に注意が必要な疾患の一つです。
糖尿病がインプラントに与える影響
- 傷の治りが遅くなる
- 感染症にかかりやすくなる
- 骨とインプラントの結合が不良になる可能性がある
ただし、血糖値が適切にコントロールされている場合(HbA1c値が7.0%以下が一つの目安とされています)、インプラント治療の成功率は大きく改善します。
糖尿病の方がインプラント治療を受ける場合、まず内科の主治医と相談し、血糖コントロールを最適化することが推奨されます。その上で、歯科医師と綿密に治療計画を立てることが大切です。
心臓疾患
心筋梗塞や狭心症 最近心筋梗塞を起こした方、コントロールが不十分な狭心症のある方は、手術のストレスが心臓に負担をかける可能性があります。
一般的には、心筋梗塞後6ヶ月以上経過し、症状が安定していれば、治療が可能とされています。ただし、循環器内科の主治医の許可が必要です。
心臓弁膜症や人工弁置換術後 心臓に人工弁が入っている方や、弁膜症のある方は、手術時の細菌が血流に乗って心臓に達し、感染性心内膜炎を引き起こすリスクがあります。
このような場合、手術前に抗生物質を投与する予防的処置が行われることが一般的です。
ペースメーカー使用中 ペースメーカーを使用している方でも、基本的にインプラント治療は可能です。ただし、手術時に使用する電気メスなどの機器が、ペースメーカーに影響を与える可能性があるため、使用機器に配慮が必要です。
血液疾患
血液凝固障害 血友病など、血液が固まりにくい病気がある場合、手術時の出血のリスクが高まります。
抗凝固薬の服用 心筋梗塞や脳梗塞の予防のために、ワーファリンなどの抗凝固薬を服用している方は、出血のリスクが高まります。
以前は、これらの薬を一時的に中止してから手術を行うことがありましたが、現在では、薬を継続したまま手術を行う方が安全とされることが多くなっています。ただし、処方医との連携が不可欠です。
免疫系の疾患
自己免疫疾患 関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど、自己免疫疾患がある場合、感染リスクが高まることがあります。また、治療薬の中には、骨の治癒に影響を与えるものもあります。
免疫抑制剤の使用 臓器移植後など、免疫抑制剤を使用している場合、感染症のリスクが高まります。慎重な管理と、主治医との連携が必要です。
その他の全身疾患
肝臓疾患 重度の肝硬変など、肝機能が著しく低下している場合、麻酔薬の代謝に影響が出たり、出血傾向が強まったりすることがあります。
腎臓疾患 重度の腎不全がある場合、感染リスクや治癒不全のリスクが高まります。透析を受けている方でも、状態が安定していれば治療が可能な場合があります。
甲状腺疾患 コントロールが不十分な甲状腺機能亢進症や機能低下症がある場合、治療にリスクを伴うことがあります。
3. 相対的禁忌症と治療の可能性

多くの全身疾患は、適切に管理することで、インプラント治療が可能になります。
主治医との連携の重要性
全身疾患をお持ちの方がインプラント治療を受ける際、最も重要なのは、主治医と歯科医師の連携です。
連携の流れ
- 歯科医師が治療計画を立案
- 主治医に治療の可否を確認
- 必要に応じて検査データの提供を依頼
- 治療前後の全身管理について相談
- 手術のタイミングや薬の調整について協議
この連携により、リスクを最小限に抑えながら、安全に治療を進めることができます。
治療を可能にするための条件
疾患のコントロール 糖尿病であれば血糖値、高血圧であれば血圧というように、基礎疾患をしっかりとコントロールすることが第一条件です。
適切なタイミング 例えば、心筋梗塞後であれば、十分な期間を空けて心臓の状態が安定してから治療を行います。がん治療後であれば、寛解期間を確保することが推奨されます。
薬剤の調整 必要に応じて、主治医と相談の上、服用している薬の調整を行います。ただし、自己判断での服薬中止は絶対に避けるべきです。
4. 局所的な問題とインプラント治療

全身的な問題だけでなく、口腔内の局所的な問題もインプラント治療に影響します。
骨の量と質の問題
骨が不足している場合 長期間歯がない状態が続くと、顎の骨は徐々に痩せていきます。また、歯周病で歯を失った場合、すでに骨が大きく失われていることがあります。
骨が不足していても、骨造成術などの追加的な処置により、インプラント治療が可能になることがあります。ただし、極端に骨が少ない場合や、骨造成術自体が困難な場合は、別の治療法を検討する必要があります。
歯周病
現在進行中の歯周病 口腔内に活動性の歯周病がある場合、インプラント周囲炎のリスクが非常に高くなります。まず歯周病の治療を完了させ、口腔内を健康な状態にしてから、インプラント治療に進むことが推奨されます。
歯周病の既往 過去に歯周病があった方は、細菌のコントロールとメンテナンスがより重要になります。
喫煙習慣
喫煙は、インプラントの失敗率を大きく高める要因です。ニコチンにより血流が悪化し、骨との結合が阻害されます。
理想的には禁煙してからインプラント治療を受けることが推奨されますが、最低でも治療前後の数週間は禁煙することが望ましいとされています。
歯ぎしり・食いしばり
強い歯ぎしりや食いしばりの習慣がある場合、インプラントに過度な力がかかり、破損や脱落のリスクが高まります。
ナイトガード(就寝時に装着するマウスピース)の使用など、対策を講じることで、リスクを軽減できます。
5. 治療を受けるための準備と対策

全身疾患がある方が安全にインプラント治療を受けるための準備について解説します。
治療前の準備
正確な情報提供 服用している薬、既往歴、アレルギーの有無など、正確な情報を歯科医師に伝えることが非常に重要です。「これくらいは大丈夫だろう」と自己判断せず、すべての情報を共有しましょう。
必要な検査の実施 全身疾患の状態を把握するため、血液検査などの検査が必要になることがあります。また、主治医からの診療情報提供書が必要な場合もあります。
口腔内の準備 虫歯や歯周病がある場合は、まずそれらの治療を完了させます。また、口腔ケアの方法を学び、実践することも大切です。
手術時の配慮
モニタリング 全身疾患がある方の場合、手術中に血圧や脈拍、酸素飽和度などをモニタリングしながら治療を行うことがあります。
静脈内鎮静法の活用 不安が強い方や、手術のストレスを軽減したい方には、静脈内鎮静法を併用することも可能です。これにより、リラックスした状態で治療を受けることができます。
短時間での手術 体への負担を減らすため、できるだけ短時間で手術を完了させるよう計画します。
治療後の管理
主治医との連携継続 治療後も、主治医との連携を継続し、全身状態の管理を行います。
定期的なメンテナンス 全身疾患がある方は、感染リスクなどが高いため、より頻繁な定期検診が推奨されることがあります。
生活習慣の改善 禁煙、適切な血糖コントロール、バランスの取れた食事など、全身の健康管理がインプラントの長期的な成功につながります。
6. よくある質問(Q&A)

Q1:高齢ですが、インプラント治療は可能ですか?
年齢だけを理由にインプラント治療ができないということはありません。重要なのは、全身の健康状態です。80代、90代でも、健康状態が良好であれば治療を受けられる方はいらっしゃいます。逆に、若くても重篤な全身疾患があれば、治療が難しい場合があります。まずは詳しい検査を受け、歯科医師と相談することをおすすめします。
Q2:複数の薬を服用していますが、インプラント治療は可能ですか?
多剤併用自体が治療の障害になることは少ないですが、薬の種類によっては注意が必要です。特に、抗凝固薬、骨粗鬆症治療薬、免疫抑制剤などを服用している場合は、主治医と歯科医師の連携が重要です。お薬手帳を持参し、すべての服薬情報を歯科医師に伝えてください。
Q3:がんの治療を受けたことがありますが、インプラント治療は可能ですか?
がんの種類、治療方法、治療後の経過期間などによって異なります。一般的には、治療終了後、一定期間が経過し、寛解状態が安定していれば、インプラント治療が可能な場合があります。特に、顎や口腔内への放射線治療を受けた場合は、慎重な判断が必要です。主治医の許可を得た上で、歯科医師とよく相談することが大切です。
Q4:糖尿病の数値が良くないのですが、どれくらい改善すればインプラント治療が可能ですか?
HbA1c値が7.0%以下にコントロールされていることが、一つの目安とされています。ただし、これは絶対的な基準ではなく、患者様の状態によって判断が異なります。まずは内科主治医と相談し、血糖コントロールの改善に取り組みましょう。血糖値が安定してから、インプラント治療について歯科医師と相談することをおすすめします。
Q5:骨粗鬆症の薬を飲んでいますが、治療はできませんか?
骨粗鬆症の薬を服用していても、多くの場合、適切な対策を講じることで治療は可能です。特に、飲み薬タイプのビスホスホネート製剤であれば、リスクは比較的低いとされています。注射タイプの場合は、より慎重な判断が必要です。主治医に相談し、必要に応じて休薬期間を設けるなどの対策を講じることで、治療が可能になる場合があります。
Q6:全身疾患があるため、他の歯科医院で治療を断られました。どうすればよいですか?
全身疾患の管理に慣れた歯科医院、あるいは大学病院などの高次医療機関であれば、対応できる場合があります。また、主治医から紹介状をもらうことで、よりスムーズに連携がとれます。諦めずに、複数の医療機関に相談してみることをおすすめします。
7. まとめ
インプラント治療は、多くの方に適した優れた治療法ですが、全身状態によっては慎重な判断が必要な場合があります。
インプラント治療が難しい場合
- コントロールが不十分な糖尿病
- 最近心筋梗塞を起こした方
- ビスホスホネート製剤(特に注射タイプ)を使用中の方
- 重度の肝臓・腎臓疾患がある方
- 免疫抑制剤を使用中の方
ただし、これらの多くは「絶対にできない」ではなく「条件を整える必要がある」という状態です。
治療を可能にするポイント
- 主治医と歯科医師の連携
- 基礎疾患の適切なコントロール
- 正確な情報提供
- 十分な術前準備
- 治療後の継続的な管理
全身疾患があっても、適切に管理することで、多くの方がインプラント治療を受けることができます。大切なのは、自己判断せず、専門家に相談することです。
当院では、全身疾患をお持ちの方のインプラント治療にも対応しており、必要に応じて主治医の先生方と連携しながら、安全な治療を提供しております。「自分は治療を受けられるだろうか」という不安や疑問がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。患者様一人ひとりの状態に合わせた、最適な治療方法をご提案させていただきます。