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インプラント治療の成功率を高める術前検査の重要性
インプラント治療を検討されている方にとって、「治療は成功するのだろうか」という不安は、最も大きな関心事の一つではないでしょうか。実は、インプラント治療の成功率は、手術前の検査と準備によって大きく左右されます。
現代のインプラント治療は、適切な術前検査と治療計画により、90%以上の高い成功率を誇っています。本記事では、インプラント治療前に行われる各種検査の内容と目的、そしてそれらがなぜ重要なのかを詳しく解説いたします。安心して治療を受けるための参考にしていただければ幸いです。
目次
- インプラント治療における術前検査の意義
- 基本的な検査の種類と内容
- 画像診断の重要性
- 全身状態の評価
- 検査結果に基づく治療計画
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
1. インプラント治療における術前検査の意義

術前検査は、安全で確実なインプラント治療を実現するための第一歩です。
なぜ術前検査が重要なのか
インプラント治療は、顎の骨に人工歯根を埋め込む外科手術です。成功させるためには、骨の状態、全身の健康状態、口腔内の状況など、さまざまな要素を事前に把握する必要があります。
例えるなら、家を建てる前に地盤調査を行うようなものです。どんなに立派な設計図があっても、地盤が弱ければ建物は安定しません。同様に、術前検査で患者様の「土台」をしっかり調べることで、最適な治療計画を立てることができます。
術前検査で分かること
骨の量と質 インプラントを埋め込むのに十分な骨があるか、骨の密度は適切かなどを確認します。
重要な解剖学的構造の位置 神経や血管、上顎洞(鼻の奥にある空洞)など、手術時に避けるべき重要な構造の位置を正確に把握します。
全身の健康状態 糖尿病や骨粗鬆症など、インプラント治療に影響を与える可能性のある疾患の有無を確認します。
口腔内の状態 虫歯や歯周病の有無、噛み合わせの状態などを評価します。
術前検査がもたらす安全性
適切な術前検査により、以下のようなリスクを回避できます。
- 神経損傷による痺れや痛み
- 上顎洞への穿孔
- インプラントの早期脱落
- 感染症
- 予期せぬ出血
術前検査は、単なる形式的な手続きではなく、患者様の安全と治療の成功を守る重要なプロセスなのです。
2. 基本的な検査の種類と内容

インプラント治療前には、さまざまな検査が行われます。それぞれの目的と内容を見ていきましょう。
問診と既往歴の確認
現在の健康状態 治療開始前に、現在の健康状態や服用している薬、アレルギーの有無などを詳しくお伺いします。
「この情報は治療に関係ないだろう」と思われるかもしれませんが、すべての情報が治療計画に影響する可能性があります。例えば、血液をサラサラにする薬を服用している場合、手術時の出血リスクに関わります。
過去の病歴 心臓病、糖尿病、骨粗鬆症、がんの治療歴など、インプラント治療に影響を与える可能性のある病歴を確認します。
生活習慣 喫煙習慣の有無は、インプラントの成功率に大きく影響します。また、歯ぎしりや食いしばりの習慣なども、治療計画に反映されます。
口腔内検査
視診・触診 歯や歯茎の状態を直接確認します。虫歯や歯周病がある場合、インプラント治療前に治療が必要です。
歯周ポケット検査 歯と歯茎の間の溝の深さを測定します。歯周病の進行度を評価し、口腔内の細菌環境を把握します。
噛み合わせの確認 現在の噛み合わせの状態を確認します。インプラント治療後の噛み合わせを設計する上で重要な情報となります。
歯型の採取
患者様の歯の形や配置を正確に記録するため、歯型を採取します。この歯型をもとに、インプラントの位置や角度、被せ物の形態などを計画します。
最近では、デジタルスキャナーを使用して、型取りの不快感を軽減できる場合もあります。
口腔内写真撮影
治療前の状態を記録するとともに、患者様ご自身にも現在の状態を確認していただくため、口腔内の写真を撮影します。
治療後と比較することで、治療の成果を実感していただくこともできます。
3. 画像診断の重要性

画像診断は、術前検査の中でも特に重要な位置を占めています。
パノラマX線撮影
パノラマX線とは 顎全体を1枚の画像で撮影する方法です。すべての歯、顎の骨、上顎洞、顎関節などを一度に確認できます。
分かること
- 骨の大まかな形態
- 虫歯や歯周病の有無
- 埋まっている親知らずの位置
- 顎関節の状態
パノラマX線は、全体像を把握するための基本的な検査ですが、平面的な画像のため、詳細な情報には限界があります。
CT検査(3次元画像診断)
CT検査の重要性 CT検査は、インプラント治療において最も重要な検査の一つです。顎の骨を3次元的に撮影し、立体的に観察することができます。
これは、平面的な地図ではなく、立体的な模型を見るようなものです。骨の厚みや高さ、内部構造まで正確に把握できます。
CT検査で分かること
骨の量と質の詳細 インプラントを埋め込む部位の骨の高さ、幅、密度を正確に測定できます。例えば、「この部位の骨の幅は5.2mm、高さは10.8mm」というように、ミリ単位で把握できます。
神経や血管の位置 下顎には「下歯槽神経」という重要な神経が通っています。この神経を傷つけると、唇や顎の痺れが起こります。CT検査により、神経の正確な位置を把握し、安全な距離を保って手術を行うことができます。
上顎洞との距離 上顎の奥歯の部分では、上顎洞という空洞が骨のすぐ上にあります。CT検査により、上顎洞までの距離を正確に測定し、インプラントの長さや、骨造成術の必要性を判断します。
骨の内部構造 骨の中に空洞があったり、骨密度が不均一だったりする場合、それらの情報もCT検査で確認できます。
CTデータを用いたシミュレーション
CT画像をコンピューターで処理することで、手術前にインプラントの埋入位置や角度をシミュレーションできます。
これにより、手術の精度が向上し、手術時間の短縮にもつながります。まるで、実際の手術前にリハーサルを行うようなものです。
サージカルガイドの作製
CT検査とシミュレーションのデータをもとに、「サージカルガイド」という手術用のガイド装置を作製できます。
これは、事前に計画した位置と角度に正確にインプラントを埋め込むための「型板」のようなものです。これにより、手術の精度がさらに向上します。
4. 全身状態の評価

インプラント治療は外科手術ですので、全身の健康状態も重要です。
血液検査
必要に応じて、血液検査を実施します。
検査項目の例
- 血糖値(糖尿病の評価)
- HbA1c(血糖コントロールの状態)
- 肝機能、腎機能
- 血液凝固能(出血のリスク評価)
- 感染症の有無
特に糖尿病の方は、血糖コントロールの状態がインプラントの成功率に大きく影響します。HbA1c値が7.0%以下にコントロールされていることが、一つの目安とされています。
血圧測定
手術前と手術中に血圧を測定します。高血圧が適切にコントロールされているかを確認し、手術中の血圧管理に役立てます。
心電図検査
心臓病の既往がある方や、高齢の方には、心電図検査を実施することがあります。手術に耐えられる心臓の状態かを確認します。
主治医との連携
全身疾患をお持ちの方の場合、主治医の先生に診療情報提供書を依頼し、手術の可否や注意事項を確認します。
例えば、抗凝固薬を服用している方の場合、休薬するか継続するかを主治医と相談します。また、糖尿病の方の場合、手術前後の血糖管理について相談します。
この連携により、全身疾患がある方でも、安全にインプラント治療を受けることができます。
5. 検査結果に基づく治療計画

すべての検査結果を総合的に分析し、患者様一人ひとりに最適な治療計画を立案します。
診断と治療計画の立案
骨の状態に応じた計画 CT検査の結果、骨の量が不足している場合、骨造成術を先に行うか、同時に行うかを計画します。
例えば、骨の高さが5mmしかなく、通常10mmのインプラントが必要な場合、サイナスリフトなどの骨造成術を計画します。
インプラントの選択 骨の状態、埋め込む部位、患者様の噛む力などを考慮して、最適なインプラントのサイズや種類を選択します。
被せ物の設計 最終的な被せ物の形態や材料を、審美性と機能性のバランスを考えて設計します。
治療の順序 虫歯や歯周病がある場合、まずそれらの治療を完了させてから、インプラント手術を行います。
患者様への説明と同意
治療計画が完成したら、患者様に詳しく説明します。
説明内容
- 現在の口腔内の状態
- 推奨される治療方法
- 治療の手順と期間
- 予想される結果
- リスクと合併症
- 代替治療法
この説明を十分にご理解いただき、同意をいただいてから治療を開始します。疑問や不安があれば、遠慮なく質問してください。
リスク評価とリスク管理
検査結果に基づいて、個々の患者様のリスクを評価し、それに応じた対策を講じます。
リスクの例と対策
- 喫煙習慣がある → 禁煙指導、成功率の説明
- 歯周病がある → 徹底した歯周治療、メンテナンス計画の強化
- 骨密度が低い → 骨造成術の検討、治癒期間の延長
- 糖尿病がある → 主治医と連携、血糖コントロールの最適化
6. よくある質問(Q&A)

Q1:術前検査にはどのくらいの時間がかかりますか?
検査の内容によって異なりますが、通常は1~2時間程度です。パノラマX線撮影やCT撮影は数分で終わりますが、口腔内検査や歯型の採取などを含めると、ある程度の時間が必要です。ただし、これらの検査は治療の成功に不可欠ですので、時間をかけて丁寧に行います。
Q2:CT検査の放射線被曝が心配です。
歯科用CTの放射線量は非常に少なく、医科用のCTの約10分の1程度とされています。また、1回の撮影での被曝量は、日常生活で1日に受ける自然放射線量と同程度です。治療の安全性を高めるメリットに比べて、リスクは極めて小さいと考えられています。
Q3:検査の結果、インプラント治療ができないと言われることはありますか?
検査の結果、すぐにはインプラント治療ができないと判断されることはあります。ただし、多くの場合、「条件を整えれば可能」という状況です。例えば、骨が不足している場合は骨造成術を行う、歯周病がある場合はまず歯周治療を行うなど、準備をしてから治療を進めることができます。
Q4:術前検査で費用はどのくらいかかりますか?
検査の内容や医院によって異なります。詳しくは、治療を受ける歯科医院にお問い合わせください。なお、検査費用は治療全体の費用に含まれている場合もあります。
Q5:他の歯科医院で撮影したCT画像を使用できますか?
多くの場合、他院で撮影したCT画像も参考にできます。ただし、撮影時期が古い場合や、画像の質が不十分な場合は、再度撮影をお願いすることもあります。以前撮影したデータがある場合は、受診時にお申し出ください。
Q6:検査で異常が見つかった場合、どうなりますか?
検査で虫歯や歯周病などが見つかった場合、まずそれらの治療を優先します。また、全身疾患が見つかった場合は、主治医と連携しながら、安全に治療を進められる方法を検討します。検査により問題を早期に発見できることは、結果的に治療の成功率を高めることにつながります。
7. まとめ
インプラント治療の成功は、手術の技術だけでなく、術前検査による正確な診断と綿密な治療計画に支えられています。
術前検査の主な目的
- 骨の量と質の正確な評価
- 重要な解剖学的構造の把握
- 全身状態の確認
- リスク要因の特定と対策
- 最適な治療計画の立案
主な検査項目
- 問診と既往歴の確認
- 口腔内検査
- パノラマX線撮影
- CT検査(3次元画像診断)
- 必要に応じた血液検査や全身検査
術前検査がもたらすメリット
- 治療の安全性の向上
- 成功率の向上
- 合併症のリスク軽減
- 治療結果の予測精度向上
- 患者様の不安の軽減
適切な術前検査により、インプラント治療の成功率は飛躍的に向上します。研究によると、適切な診断と治療計画に基づいたインプラント治療の10年生存率は90%以上とも言われています。
術前検査は、単なる形式的な手続きではなく、安全で確実な治療を実現するための重要なプロセスです。検査にかかる時間や費用は、長期的な治療の成功への投資と考えることができます。
当院では、最新の検査機器を用いた精密な術前検査を実施し、患者様一人ひとりに最適な治療計画をご提案しております。検査結果については、分かりやすくご説明し、疑問や不安にも丁寧にお答えいたします。
インプラント治療をご検討中の方、術前検査について詳しく知りたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。安心して治療を受けていただけるよう、スタッフ一同全力でサポートさせていただきます。