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複数歯欠損のインプラント治療
多くの歯を失ってしまった方、あるいは総入れ歯をお使いの方の中には、「しっかり噛めない」「入れ歯が合わない」「見た目が気になる」といった悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。そんな方々に注目されているのが、「オールオン4(All-on-4)」という治療法です。
オールオン4は、最小限のインプラント本数で、すべての歯を固定式の人工歯で回復できる画期的な治療法です。従来のインプラント治療と比べて、身体的・経済的負担を軽減できる可能性があります。本記事では、オールオン4の仕組み、メリット・デメリット、従来の治療法との違いなどを詳しく解説いたします。
目次
- オールオン4とは?基本的な仕組み
- オールオン4と従来のインプラント治療の違い
- オールオン4のメリット
- オールオン4のデメリットと注意点
- オールオン4が適している方・適さない方
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
1. オールオン4とは?基本的な仕組み

オールオン4について、まず基本的な知識を理解しましょう。
オールオン4の定義
オールオン4(All-on-4)は、片顎(上顎または下顎)に4本のインプラントを埋め込み、その上に12本分の固定式の人工歯を装着する治療法です。
「4本のインプラントで、すべての歯を支える」というのが、名前の由来です。
治療の仕組み
インプラントの配置 オールオン4では、4本のインプラントを戦略的な位置に配置します。
- 前方の2本:まっすぐに埋め込む
- 後方の2本:斜めに傾けて埋め込む
後方のインプラントを傾けることで、骨の厚い部分を利用でき、長いインプラントを使用できます。これは、建物の基礎工事で、斜めに杭を打つことで安定性を高めるのと似た考え方です。
人工歯の装着 4本のインプラントを橋渡しするように、12本分の歯が一体となった義歯を装着します。まるで、4本の柱で橋を支えるようなイメージです。
開発の背景
オールオン4は、ポルトガルの歯科医師パウロ・マロ博士によって開発され、1998年に発表されました。多くの歯を失った方が、より少ない本数のインプラントで、快適に噛める生活を取り戻せるよう考案されました。
現在では世界中で実施され、多くの実績があります。
2. オールオン4と従来のインプラント治療の違い

オールオン4と従来のインプラント治療の違いを比較してみましょう。
インプラントの本数
従来の方法 片顎のすべての歯を失った場合、従来は8~10本以上のインプラントを埋め込むことが一般的でした。失った歯1本につき、1本のインプラントという考え方です。
オールオン4 わずか4本のインプラントで、片顎すべての歯を支えます。インプラントの本数が少ないため、手術時間が短く、身体への負担も軽減されます。
骨造成術の必要性
従来の方法 骨の量が不足している部分には、骨造成術(骨を増やす処置)が必要になることが多くあります。この場合、治療期間が延び、費用も増加します。
オールオン4 インプラントを斜めに埋め込むことで、骨の厚い部分を利用できるため、骨造成術が不要になるケースが多いです。
ただし、極端に骨が少ない場合は、オールオン4でも骨造成術が必要になることがあります。
治療期間
従来の方法 骨造成術を行う場合、骨が成熟するまで数ヶ月待つ必要があります。また、インプラント埋入後も、骨との結合を待つ期間が必要です。全体で6ヶ月~1年以上かかることが一般的です。
オールオン4 多くの場合、手術当日または数日以内に仮の歯を装着できます(即時荷重)。そのため、治療期間中も歯がない状態を避けられます。
最終的な歯の装着まで含めても、数ヶ月程度で治療が完了することが多いです。
適応症例
従来の方法 ほぼすべての症例に対応可能です。1本の歯を失った場合から、すべての歯を失った場合まで、幅広く対応できます。
オールオン4 主に、多くの歯を失った方、または総入れ歯をお使いの方が対象です。残っている歯が少数で、それらも抜歯が必要な状態の場合に適しています。
3. オールオン4のメリット

オールオン4には、多くのメリットがあります。
手術当日から噛める
オールオン4の最大の特徴は、多くの場合、手術当日または数日以内に固定式の仮の歯を装着できることです。
これにより、以下のようなメリットがあります。
日常生活への影響が少ない 入れ歯のように取り外す必要がなく、食事や会話もほぼ通常通りに行えます。「明日、大事な会議がある」というような場合でも、歯がない状態で外出する心配がありません。
見た目の不安が少ない 治療期間中も、歯がある状態を保てるため、審美的な問題がほとんどありません。
身体的負担が少ない
手術部位が限られる 4本のインプラントのみを埋め込むため、手術範囲が限定され、身体への負担が軽減されます。
手術時間が短い インプラントの本数が少ないため、手術時間も短縮されます。通常、片顎の手術は2~3時間程度で完了します。
術後の腫れや痛みが少ない 手術範囲が限られているため、術後の腫れや痛みも、従来の方法より少ない傾向があります。
しっかり噛める
固定式で安定している 入れ歯のようにずれたり外れたりすることがなく、安定してしっかりと噛むことができます。
噛む力の回復 オールオン4での噛む力は、天然歯の70%程度まで回復するとされています。これは、入れ歯(天然歯の40%程度)と比べて、大幅な改善です。
硬いものや粘着性のあるものも、ほとんど気にせず食べられるようになります。
見た目が自然
審美性が高い 人工歯は、天然歯に近い色や形に作られます。入れ歯のようなプラスチック感がなく、自然な見た目です。
歯茎の部分も再現 失われた歯茎の部分も、ピンク色の樹脂で再現されるため、口元全体の審美性が向上します。
発音がしやすい
入れ歯のように口の中に厚みのある装置がないため、舌の動きが制限されず、発音がしやすくなります。
顎の骨の吸収を抑制
インプラントから顎の骨に噛む力が伝わるため、骨が痩せるのを防ぐ効果があります。入れ歯の場合、徐々に骨が痩せていき、顔貌が変化することがありますが、オールオン4ではこのリスクが軽減されます。
清掃がしやすい
入れ歯のように毎日取り外して洗浄する必要がありません。通常の歯磨きとフロスでケアできます。
ただし、人工歯と歯茎の間の清掃には、専用のフロスや歯間ブラシが必要です。
4. オールオン4のデメリットと注意点

オールオン4にも、いくつかのデメリットや注意点があります。
適応できないケースがある
骨の状態による制限 骨が極端に少ない場合や、骨密度が非常に低い場合は、オールオン4が適用できないことがあります。この場合、骨造成術を併用するか、別の治療法を検討する必要があります。
全身疾患による制限 重度の糖尿病や骨粗鬆症など、インプラント治療全般に影響を与える疾患がある場合、オールオン4も適用が難しくなります。
定期的なメンテナンスが不可欠
インプラント周囲炎のリスク オールオン4でも、インプラント周囲炎(インプラント周りの炎症)のリスクがあります。これを予防するため、定期的な歯科医院でのメンテナンスと、日々の丁寧なセルフケアが必要です。
メンテナンスの頻度 通常、3~6ヶ月に1回程度の定期検診が推奨されます。専門的なクリーニングと、ネジの緩みや被せ物の状態のチェックを行います。
破損や修理のリスク
人工歯の破損 固いものを噛んだときなど、稀に人工歯が欠けたり割れたりすることがあります。
修理が必要な場合 人工歯が一体となっているため、一部が破損しても、全体を外して修理する必要があることがあります。
ただし、多くの場合、修理は可能で、完全に作り直す必要はありません。
保険が適用されない
オールオン4は、一部の特殊なケースを除き、保険が適用されません。全額自己負担となるため、従来の入れ歯と比べて、費用は高額になります。
ただし、長期的な視点で見ると、入れ歯の作り直しや調整の費用、食事の制限がなくなることによる生活の質の向上など、メリットも大きいと言えます。
喫煙のリスク
喫煙は、インプラントの成功率を大きく低下させます。オールオン4でも同様で、喫煙者の場合、失敗率が非喫煙者の2倍以上になるとも言われています。
治療を受ける場合、禁煙が強く推奨されます。
5. オールオン4が適している方・適さない方

オールオン4がどのような方に適しているのか、また適さないのかを見ていきましょう。
オールオン4が適している方
多くの歯を失っている方 上顎または下顎の大部分の歯を失っている方、または残っている歯も抜歯が必要な状態の方に適しています。
総入れ歯が合わない方 総入れ歯を使用しているが、ずれる、痛い、しっかり噛めないなどの問題を抱えている方に、良い選択肢となります。
骨造成術を避けたい方 骨の量がやや不足しているが、大規模な骨造成術は避けたいという方に、オールオン4が適していることがあります。
早く歯を回復したい方 仕事や生活の都合で、長期間歯がない状態を避けたい方、早く日常生活に戻りたい方に適しています。
全身状態が比較的良好な方 手術に耐えられる健康状態であることが前提です。
オールオン4が適さない方
骨の量が極端に少ない方 骨造成術を併用しても、4本のインプラントで支えることが困難な場合は、別の方法を検討します。
重度の全身疾患がある方 コントロールが不十分な糖尿病、重度の心臓病など、手術のリスクが高い方は、治療が難しい場合があります。
喫煙をやめられない方 喫煙は治療の成功率を大きく低下させるため、禁煙できない場合は、オールオン4はおすすめできません。
定期的なメンテナンスが難しい方 遠方にお住まいで定期的に通院できない、または経済的・時間的な理由でメンテナンスを継続できない方は、長期的な成功が難しくなります。
歯ぎしりや食いしばりが強い方 ナイトガードの使用などで対策できますが、非常に強い歯ぎしりがある場合、インプラントや人工歯への負担が大きくなります。
6. よくある質問(Q&A)

Q1:オールオン4の治療期間はどのくらいですか?
手術当日または数日以内に仮の歯が入り、日常生活に戻れます。最終的な人工歯の装着までは、骨とインプラントの結合を待つため、通常3~6ヶ月程度かかります。ただし、個人差があり、骨の状態や治癒の経過によって変わります。従来のインプラント治療と比べると、かなり短期間で治療が完了します。
Q2:手術は痛いですか?
手術中は局所麻酔を使用するため、痛みはほとんど感じません。必要に応じて、静脈内鎮静法を併用し、リラックスした状態で手術を受けることも可能です。術後は、痛みや腫れが出ることがありますが、鎮痛剤でコントロールできる程度です。多くの患者様から、「思っていたより楽だった」という声をいただいています。
Q3:上下両方の治療が必要な場合、同時にできますか?
可能ですが、身体への負担を考慮して、上下別々に行うことが一般的です。まず片方を治療し、数ヶ月後にもう片方を治療します。ただし、患者様の状態や希望によっては、同時に行うこともあります。歯科医師とよく相談して決定します。
Q4:オールオン4の寿命はどのくらいですか?
適切なケアとメンテナンスを行えば、10年以上使用できることが多いです。研究では、10年後の成功率が90%以上とも報告されています。ただし、喫煙や口腔ケアの不足、定期検診を受けないことなどにより、寿命は短くなります。長持ちさせるには、日々のケアと定期的なメンテナンスが不可欠です。
Q5:オールオン4と入れ歯、どちらを選ぶべきですか?
それぞれにメリット・デメリットがあり、患者様の状態や希望によって最適な選択は異なります。オールオン4は、しっかり噛める、見た目が良い、違和感が少ないなどのメリットがありますが、手術が必要で費用も高額です。入れ歯は、手術不要で費用も抑えられますが、噛む力は弱く、違和感があります。まずは歯科医師に相談し、詳しい説明を受けた上で、ご自身に合った方法を選択することをおすすめします。
Q6:オールオン4の後、普通に食事はできますか?
はい、ほとんどの食べ物を問題なく食べられます。仮の歯の期間中は、硬いものや粘着性の高いものは避ける必要がありますが、最終的な歯が入れば、ステーキやりんごなど、硬いものもしっかり噛めるようになります。入れ歯と比べて、食事の制限がほとんどなくなることは、大きなメリットの一つです。
7. まとめ
オールオン4は、多くの歯を失った方や総入れ歯をお使いの方にとって、生活の質を大きく向上させる可能性のある治療法です。
オールオン4の主な特徴
- 4本のインプラントで片顎すべての歯を支える
- 手術当日から仮の歯が入る(即時荷重)
- 従来のインプラント治療より身体的・時間的負担が少ない
- しっかり噛めて、見た目も自然
- 固定式で、入れ歯のような違和感がない
メリット
- 治療期間が短い
- 骨造成術が不要なことが多い
- 手術の負担が少ない
- 天然歯に近い噛み心地と審美性
- 顎の骨の吸収を抑制
デメリット・注意点
- 適応できないケースがある
- 定期的なメンテナンスが必須
- 保険が適用されない
- 喫煙は治療の成功率を低下させる
適している方
- 多くの歯を失っている方
- 総入れ歯が合わない方
- 早く歯を回復したい方
- 全身状態が良好な方
オールオン4は、すべての患者様に適した治療法というわけではありませんが、条件が合えば、非常に満足度の高い結果が得られる可能性があります。
「入れ歯が合わなくて困っている」「多くの歯を失って、どうすればよいか分からない」という方は、まず歯科医院でご相談されることをおすすめします。
当院では、オールオン4を含む様々なインプラント治療に対応しております。CT検査などの精密な診断をもとに、患者様一人ひとりに最適な治療方法をご提案させていただきます。治療に関するご不安やご質問がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。しっかり噛める喜びを、再び実感していただけるようサポートいたします。
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