News
八重歯の矯正治療、抜歯が必要なケースとそうでないケース
「八重歯がチャームポイント」という考え方もありますが、一方で「歯並びが気になる」「矯正したい」と悩まれている方も少なくありません。八重歯の矯正を考えたとき、「健康な歯を抜かなければいけないの?」という不安を抱く方も多いのではないでしょうか。
実は、八重歯の矯正では、抜歯が必要な場合とそうでない場合があります。どちらになるかは、顎の大きさ、歯の大きさ、八重歯の程度などによって異なります。本記事では、八重歯ができる原因、矯正治療の方法、抜歯の判断基準などを詳しく解説いたします。ご自身に合った治療法を選ぶための参考にしていただければ幸いです。
目次
- 八重歯とは?基礎知識
- 八重歯ができる原因
- 八重歯を放置するリスク
- 抜歯が必要なケース・不要なケース
- 抜歯と非抜歯、それぞれの治療方法
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
1. 八重歯とは?基礎知識

まず、八重歯について基本的な知識を理解しましょう。
八重歯の定義
八重歯とは、一般的に犬歯(糸切り歯)が歯列から飛び出している状態を指します。正式には「犬歯の低位唇側転位」と呼ばれます。
犬歯は、前歯から数えて3番目の、やや尖った形をした歯です。この歯が、本来あるべき位置より外側(唇側)や高い位置に生えている状態が八重歯です。
日本と海外の認識の違い
日本では、八重歯を「かわいい」「チャームポイント」と捉える文化がありますが、欧米では「不正咬合」として治療の対象と考えられることが一般的です。
実際、八重歯があると、見た目の問題だけでなく、機能的な問題も生じることがあります。
八重歯の発生頻度
日本人は顎が小さい傾向があり、八重歯を含む叢生(歯のガタガタ)が多く見られます。不正咬合の中でも、叢生は最も多いタイプとされています。
2. 八重歯ができる原因

なぜ八重歯ができるのでしょうか。主な原因を見ていきましょう。
顎と歯の大きさのアンバランス
顎が小さい、または歯が大きい 八重歯の最大の原因は、顎の大きさに対して歯が大きすぎる、あるいは顎が小さすぎることです。
例えるなら、10人掛けのベンチに12人が座ろうとすると、後から来た人は座れずに外側にはみ出してしまうようなものです。
犬歯は最後に生える 犬歯は、永久歯の中でも最後の方に生えてくる歯です。先に他の歯が生えてしまうと、犬歯が入るスペースが不足し、外側に押し出される形で八重歯になります。
遺伝的要因
顎の大きさや歯の大きさは、遺伝的な影響を受けます。親が八重歯の場合、お子様も八重歯になる可能性が高まります。
乳歯の早期喪失
乳歯が虫歯などで早く抜けてしまうと、隣の歯が倒れてきて、永久歯が生えるスペースが不足することがあります。
悪習癖
指しゃぶり、舌を前に出す癖、口呼吸などの悪習癖により、歯並びや顎の発育に影響が出ることがあります。
3. 八重歯を放置するリスク

「八重歯があっても、特に困っていない」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、八重歯には以下のようなリスクがあります。
虫歯や歯周病のリスク
清掃が困難 八重歯は、歯ブラシが届きにくく、磨き残しが多くなります。その結果、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
特に、八重歯とその隣の歯の間は、非常に清掃が難しい場所です。
咬合機能への影響
犬歯の本来の役割が果たせない 犬歯は、顎を横に動かすとき(側方運動)の「ガイド」として重要な役割を果たします。八重歯で犬歯が正しい位置にないと、この機能が損なわれ、奥歯に過度な負担がかかることがあります。
口内炎のリスク
八重歯が頬の内側に当たり、口内炎ができやすくなることがあります。
審美的な問題
笑ったときに八重歯が目立つことを気にして、人前で笑顔を見せることをためらうようになる方もいらっしゃいます。
特に、就職活動や結婚式など、人生の重要な場面で自信を持って笑えないことは、心理的な負担になります。
将来的な歯の喪失リスク
八重歯自体や、その隣接する歯が、清掃不良により虫歯や歯周病になり、将来的に失われるリスクがあります。
4. 抜歯が必要なケース・不要なケース

八重歯の矯正で、抜歯が必要かどうかは、どのように判断されるのでしょうか。
抜歯が必要なケースの判断基準
以下のような場合、抜歯を伴う矯正治療が推奨されることが多いです。
スペース不足が大きい 歯がきちんと並ぶためのスペースが、大幅に不足している場合です。目安として、片顎で5mm以上のスペース不足がある場合、抜歯が検討されます。
八重歯の飛び出しが大きい 犬歯が大きく外側に飛び出している場合、非抜歯では十分に内側に入れることが難しいことがあります。
口元の突出感がある 前歯全体が前に出ていて、横から見たときに口元が突き出ている場合、抜歯をしてスペースを作り、前歯を後ろに引っ込める必要があります。
顎が小さい 顎の大きさに対して、歯が明らかに大きすぎる場合、歯列を横に広げるだけでは対応できません。
上下の噛み合わせを改善する必要がある 八重歯だけでなく、上下の歯の噛み合わせ全体を改善する必要がある場合、抜歯を伴う全体矯正が推奨されます。
抜歯が不要なケースの判断基準
以下のような場合、非抜歯での矯正治療が可能なことが多いです。
スペース不足が軽度 片顎で3~4mm程度までのスペース不足であれば、歯列を横に広げたり、歯を少し削ったり(ディスキング)することで、スペースを確保できます。
八重歯の飛び出しが軽度 犬歯が少し外側に出ている程度であれば、非抜歯で対応できることが多いです。
口元の突出感がない 横から見たときに、口元が前に出ていない場合、抜歯をせずに歯を並べることができます。
成長期の子ども 子どもの場合、顎の成長を利用して、顎を拡大することで、スペースを作れることがあります。
部分矯正を希望 前歯だけの見た目を改善する部分矯正の場合、抜歯をせずに対応できることがあります。ただし、仕上がりには限界があります。
どの歯を抜くのか
抜歯が必要な場合、多くのケースでは、小臼歯(前から4番目または5番目の歯)を抜きます。
なぜ小臼歯を抜くのか
- 前歯と奥歯の中間にあり、抜いても噛み合わせへの影響が少ない
- 抜いたスペースを利用して、前歯を後ろに移動させやすい
- 見た目にも目立たない位置
まれに、八重歯の犬歯自体を抜くこともありますが、犬歯は根が長く丈夫で、噛み合わせにも重要な役割を果たすため、できるだけ残すことが推奨されます。
5. 抜歯と非抜歯、それぞれの治療方法

抜歯を伴う場合と伴わない場合、それぞれの治療方法を見ていきましょう。
非抜歯矯正の方法
歯列の拡大 装置を使って、歯列を横に広げ、スペースを作ります。拡大床やワイヤー矯正で対応できます。
ただし、拡大できる範囲には限界があります。過度に拡大すると、後戻りしやすくなったり、歯茎が下がったりするリスクがあります。
ディスキング(IPR) 歯と歯の間を、ごくわずか(0.2~0.5mm程度)削ることで、スペースを作ります。例えば、10箇所で0.3mmずつ削れば、合計3mmのスペースが得られます。
歯のエナメル質の範囲内での処置なので、虫歯のリスクが高まることはありません。
奥歯を後ろに移動 奥歯を後方に移動させることで、前歯のためのスペースを作ります。ただし、移動できる距離には限界があります。
抜歯矯正の方法
抜歯のタイミング 矯正装置を装着する前に抜歯することもあれば、装置装着後に抜歯することもあります。治療計画によって異なります。
抜歯後の治療 小臼歯を抜いたスペースを利用して、八重歯の犬歯を正しい位置に移動させます。同時に、前歯全体を後ろに移動させ、口元の突出感を改善します。
抜歯したスペースは、矯正治療の過程で徐々に閉じていき、最終的には隙間がなくなります。
治療期間 抜歯矯正の方が、歯を大きく移動させるため、治療期間がやや長くなる傾向があります。一般的には2~3年程度かかることが多いです。
治療後の保定
抜歯・非抜歯にかかわらず、矯正治療後は保定装置(リテーナー)を使用します。
特に八重歯の場合、元の位置に戻ろうとする力が強く働くため、保定装置の使用は非常に重要です。通常、1~2年間は保定装置を使用し、その後も定期的なチェックが推奨されます。
6. よくある質問(Q&A)

Q1:抜歯と非抜歯、どちらを選ぶべきですか?
患者様の歯並びの状態、顎の大きさ、口元のバランスなどを総合的に判断して決定します。どちらにもメリット・デメリットがあります。抜歯矯正は、スペースを十分に確保でき、仕上がりが良好ですが、健康な歯を抜くという心理的負担があります。非抜歯矯正は、歯を抜かずに済みますが、適用できる症例が限られます。まずは歯科医師に詳しく診察してもらい、それぞれの選択肢について説明を受けた上で、ご自身の価値観に合った方法を選ぶことをおすすめします。
Q2:八重歯だけを治す部分矯正はできますか?
軽度の八重歯であれば、部分矯正で対応できることもあります。ただし、部分矯正は主に見た目の改善を目的としており、噛み合わせ全体を整えることはできません。また、仕上がりにも限界があります。「完璧な歯並び」を求める場合は、全体矯正が推奨されます。
Q3:八重歯の犬歯自体を抜いてはいけないのですか?
犬歯は、歯の中で最も根が長く丈夫で、噛み合わせにも重要な役割を果たします。そのため、できるだけ残すことが推奨されます。ただし、犬歯が著しく位置異常で、移動が困難な場合や、すでに虫歯や歯周病で状態が悪い場合は、犬歯を抜くこともあります。最終的には、個々の状態によって判断されます。
Q4:大人になってからでも八重歯の矯正はできますか?
はい、年齢に上限はありません。大人でも八重歯の矯正は可能です。ただし、子どもの時期のように顎の成長を利用した治療はできないため、スペースが大きく不足している場合は、抜歯が必要になることが多くなります。また、歯周病などがある場合は、まずその治療が必要です。
Q5:抜歯をすると顔が変わりますか?
抜歯矯正により、前歯が後ろに移動すると、口元の突出感が改善され、横顔のラインが整うことがあります。これは良い変化として捉えられることが多いです。ただし、「頬がこけた」と感じる方もまれにいらっしゃいます。治療前に、シミュレーションなどで仕上がりのイメージを確認することが大切です。
Q6:マウスピース矯正でも八重歯は治せますか?
軽度から中等度の八重歯であれば、マウスピース矯正で対応できることも増えています。ただし、八重歯の程度が大きい場合や、抜歯を伴う場合は、ワイヤー矯正の方が確実性が高いとされています。マウスピース矯正で対応可能かどうかは、歯科医師に診断してもらいましょう。
7. まとめ
八重歯の矯正治療では、抜歯が必要な場合とそうでない場合があり、患者様の状態によって最適な方法が異なります。
八重歯ができる主な原因
- 顎と歯の大きさのアンバランス
- 遺伝的要因
- 乳歯の早期喪失
- 悪習癖
八重歯を放置するリスク
- 虫歯や歯周病のリスク増加
- 咬合機能への影響
- 口内炎のリスク
- 審美的な問題
抜歯が必要なケース
- スペース不足が大きい(片顎5mm以上)
- 八重歯の飛び出しが大きい
- 口元の突出感がある
- 顎が小さい
抜歯が不要なケース
- スペース不足が軽度(片顎3~4mm程度まで)
- 八重歯の飛び出しが軽度
- 口元の突出感がない
- 成長期の子ども
治療方法
- 非抜歯:歯列の拡大、ディスキング、奥歯の後方移動
- 抜歯:主に小臼歯を抜いてスペースを作り、犬歯を移動
八重歯の矯正治療において、「抜歯」という言葉に抵抗を感じる方は少なくありません。しかし、抜歯をすることで、より美しく機能的な歯並びを実現できるケースも多くあります。
一方、技術の進歩により、以前は抜歯が必要とされていたケースでも、非抜歯で対応できるようになってきています。
大切なのは、ご自身の歯並びの状態を正確に把握し、それぞれの治療法のメリット・デメリットを理解した上で、納得のいく選択をすることです。
当院では、精密な検査とシミュレーションにより、患者様一人ひとりに最適な治療方法をご提案しております。「八重歯が気になるが、抜歯は避けたい」「どんな治療法があるのか知りたい」など、ご不安やご希望がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。美しい歯並びと健康な噛み合わせを手に入れるお手伝いをさせていただきます。